学部生の皆さんへ

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 学部生の皆さん、こんにちは。研究室を主宰している寺田です。
 日々、様々な活動を通して充実したキャンパスライフを送っていますか?学部3年生の前期までは学生実験もありますが、学年によって教養・専門の違いはあっても座学中心の講義を受け、勉学に励んでいることと思います。一方、研究室に配属される3年生後期からは、それまでの座学から研究活動が中心となり、大学生活も一変します。研究活動に期待感を持つと同時に、研究室での新たな生活に不安を覚えている方も多くおられると思います。

 3年生前期までの座学では多くの場合に期末期に試験が実施され、一定レベルを越えれば単位取得といった日々が半年ごとに繰り返されています。そうしたルーチン化した日々に充実感を見出すことができず、「何のための勉強?試験のため?研究室配属で有利になるため?」といった疑問を持ち、勉強そのものに興味を失いかけている学生さんも少なからずいると思います。実は学部学生時代の私自身もそういう一人でした。出題のヤマを張ってゲーム感覚で試験の点数を取ることに終始し、「当たった、外れた」と一喜一憂しながら、サークル活動に傾倒していた自身を思い出します(後に教鞭をとるようになり、毎年ほぼ同じことを教えているのだからヤマが「当たった、外れた」が、如何に他愛もないことかにも気づかされました。一方で、サークル活動での様々な経験は後々とても役立ちましたが)。講義の難度は高校時代に比べ格段に高くなり知的好奇心をくすぐるものではありましたが、「正解が用意されている」試験に制限時間内で記憶の全てを吐き出すことに、真の意義を見出すことができずにいました。

 そうこうしているうちに研究室配属となり、「なんのための勉強か」その真の意義に初めて気づくことになりました。「正解など最初から用意されていない」それが研究だと思い知らされたのです。その時のカルチャーショックは今でも鮮明に覚えていますが、「なんと愚かな視野の狭さか」と思いっきり頭を殴られた思いでした。「正解の用意されていない問い」に自分なりの答えを出すには、確固たる知識が必要で、そうでなければ創造性に満ちた結果にはつながらない。その思いに気づかされた時に、「学部時代にもっと勉強しておけば」と後悔したことを今でも良く覚えています。

 私たちの研究室では、「触媒」をキーワードに世界に通用する研究を目指しています(詳しくはこちらから→研究概要)。高選択性を実現する触媒設計や新たな分子変換を実現する触媒系の開発が高度分子変換プロセスの開拓につながり、最終的にはこれらの成果を生物活性物質や機能性物質などの新分子創出に結びつけることを目標としています。研究は「正解が用意されていない」からこそ創造力を掻き立てますが、一方で、こうした「高度分子変換プロセス」を開拓する道のりは決して容易ではありません。正解の用意されていない問いに果敢に挑戦し、先入観にとらわれることなく自由な発想のもとに正解を導き出す過程は楽しくもありますが、思い描いた通りには進まずに的外れになることも多々あります。連戦連敗の日々を過ごすことも少なくありません。知力はもちろんのこと、気概をも求められる険しい道でもあります。それだからこそ、その一端をつかみ取った瞬間の達成感は格別です。大袈裟すぎる表現かもしれませんが、「自然界」を制覇した!と優越感に浸る一瞬でもあります。そう、残念ながら一瞬です。難度の上がった次なる壁が私たちの挑戦を待っているからです。

 エネルギー、食糧、感染症対策、環境など、現代社会の抱えている課題の多くは物質にまつわるものです。研究を通して身に着けた知力と気概、すなわち「物質の創造を通した学び」は将来、必ずや社会の抱える課題の解決につながる、まさに「世界を変える」礎として活かされるはずです。研究は皆さん自身に磨きをかける何にも代えがたい優れた道具です。最高の磨きをかけるために、私たちは世界に通用する研究(道具)を用意して皆さんを待っています。緑あふれる青葉山のキャンパスで、若き皆さんとともに新たな挑戦ができること、近い将来それらを通じて培った力が新たな時代の創造に向けて発揮されることを大いに期待しています。